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東京高等裁判所 昭和53年(ウ)627号 決定 1978年7月31日

申立人 板東三七郎

主文

本件忌避申立てを却下する。

理由

本件忌避申立ての理由の要旨は、『申立人は頭書控訴事件の控訴人であり、併合前の昭和五二年(ネ)第二五九号事件について控訴人本人尋問が施行され、裁判所書記官甲野太郎が本人調書を作成したが、右調書中には、(1)申立人の陳述の意味を取り違えた記載、(2)申立人の陳述した事実の記載漏れ、(3)申立人の陳述しない事実の記載、(4)誇張した表現の使用等の誤りがある。右は頭書控訴事件につき不公平な裁判が行われると疑うに足りる事情に該当すると信ずるので、同書記官に対し忌避の申立てをする。』というのである。

しかしながら、申立人の所論は要するに調書の記載の誤りを主張し、その正確性に異議を唱えるものにすぎず、これは専ら民事訴訟法一四六条二項の異議によって解決を図るべきことがらであって、調書の記載が正確性を欠くとの一事をもって直ちに当該調書の作成者である裁判所書記官につき裁判の公正を妨げるべき事情があるということはできない。

よって、申立人の本件忌避申立ては理由がないから、これを却下すべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 海老塚和衛 判事 近藤浩武 鬼頭季郎)

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